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横浜市のマンション傾斜問題は、なぜ発生したのか?

傾斜問題
(写真=PIXTA)

 2015年10月、横浜市都筑区にあるマンションで、建物を支える杭の一部が支持層に達していなかったことや、2次下請け業者の社員が杭打ちに関するデータ偽装や改ざんを行っていたことが明らかになり、大きな社会問題となりました。国土交通省2016年1月13日、元請け会社に業務改善命令と指名停止処分、1次下請け、2次下請けの2社に対しては15日間の営業停止処分という厳しい行政処分を下しました。なぜ、このような事態は起きてしまったのでしょうか。

下請け業者にしわ寄せが行きやすい業界構造

 問題となった横浜のマンションは、全4棟のマンションです。そのうちの1棟で、渡り廊下のつなぎ目の部分が上下に2cm程度ずれていることが住民からの情報で判明しました。調査の結果、52本の杭のうちの6本が支持層の地盤に達しておらず別の2本も長さが不十分であることが判明しました。さらには、45本の杭のデータが、強度の部分でも偽装されていることが発覚しました。2次下請け会社の担当者が、地盤の強度を調べるボーリング調査をせずに、別棟のデータを無断で転用、改ざんしていたのです。

 このマンションの売り主は、マンション販売戸数で上位を誇る業界大手でした。このような大手デベロッパーの物件で、データ偽装や改ざんが行われた事も大きな話題となりました。

 デベロッパーにとってマンション分譲事業は、オフィスビルや商用施設の開発事業と比較すると利幅が薄いため、建設コスト圧縮のしわ寄せが下請け業者に行きやすいといわれています。

 今回の問題が発生した原因の一つとして、下請け業者にコスト削減を強いる業界構造を指摘する声があります。結果的に工期を短縮せざるを得なくなった下請けが無理をして、このような事態に陥ったとも考えられます。

元請けと下請けの力関係や認識不足も

 このマンションの基礎工事の工期は60日程度だったそうです。比較的短い日程といえますが、その後の工事で遅れは取り戻すこともできます。また工事中、想定よりも杭の長さが足りていないという事態も起こりえます。杭を継ぎ足すことが必要になった場合は、2次下請け業者が1次下請け業者の責任者に確認してから作業が行われます。杭の追加発注などを行うとコストがかさみ、工期も伸びます。旭化成建材側が杭の長さが足りないことを把握していても、立場が弱く、言い出せなかったということも考えられます。

 実際に、工事現場で進捗や安全確認などを行っていたのは、1次下請け業者の日立ハイテクノロジーズです。旭化成建材が工事中に杭の長さが足りないと気付いた時点で、日立ハイテクノロジーズの担当者に報告し、事前にチェックすることが必要でした。

 今回、マンションの杭打ち本数や設計を2次下請け会社に指示したのは、元請け会社でした。元請け会社の役員は2次下請け会社に対して、記者会見の中で「ちゃんとやってもらっていると思っていた。裏切られた」と強く非難していました。しかし、不正を見抜けなかったことについては「管理が不十分だった」と話しています。また、元請け会社がマンションを設計した時点で、すでに杭の長さが足りていなかったのではないかという指摘もあります。1次下請け会社の主任技術者がほとんど現場にいない「マル投げ」状態であった事も判明しており、下請け業者間の連携が取れていなかった可能性も考えられます。

マンション建設後に不正が発覚するまで、時間がかかる

 各自治体に設けられている建設局では建物の検査を行っていますが、その大半は民間の指定確認検査機関が担当しています。今回の横浜の物件も、市内にある民間検査機関が担当しました。検査機関は施工計画が建築基準法に沿っているかという確認や、中間検査として工事の進捗確認を行います。検査機関が中間検査を行った時は、すでに杭が打ちこまれた後でした。マンションなどの建設では、自治体に建築計画概要書が提出されますが、杭の施工状況などを記載する必要はないため、杭打ちの詳細やデータの改ざんなどを自治体が把握することは不可能です。結局、建設中に不正があっても、検査機関はそれを見抜くことができません。

 また、今回のように、杭が支持層まで届いていないにも関わらず、工事がそのまま進み、不正が発覚しないままマンションが完成してしまえば、不具合を発見することは難しいのが実情です。マンション完成後すぐではなく、かなりの年月が経ってから建物に問題が出てくるでしょう。今回は渡り廊下のつなぎ目のずれにより発覚しましたが、それがなければ住人たちは施工不良のマンションであると気が付かないまま住み続けていたかもしれません。

まとめ

 今回のマンション傾斜問題が起きた背景には、このような複数の要因があり、実際にデータを改ざんした2次下請け会社だけが悪いとは言い難いのが現状です。これをきっかけに国交省では、施工管理のルールを明確にして再発を防止する方針ですが、罰則のないガイドラインに留まるため企業側の努力次第ということになり、どれほど実効性があるかわからないと疑問視する声が出ています。しかし、今回の問題では住民への補償などで数百億円の費用が発生するとみられており、法改正よりもむしろ再発防止につながると指摘する専門家もいます。

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